Marco 知の鍵

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『悼む人』 天童荒太

 

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題 名 : 悼む人
著 者 : 天童荒太
発 行 : 文芸春秋
発行日 : 2008-11-30
読了日 : 2009-03-01


聖者なのか、偽善者か?「悼む人」は誰ですか。
 善と悪、生と死が交錯する至高の愛の物語。第140回直木賞受賞作
 
もうり 君の薦めで読んでみたけど、オレは駄目だったな。
主人公が何故こんなことをしているのかっていうことにカタルシスを得られなかった。
まるこ 確かに『悼む』ことで、彼がどう変わりたいのかは、示されていないわよね。
ピンとこない時はスパッ降りた方がいいわ。
もうり どの辺が面白いと思ったの?
まるこ この本、3人の登場人物が交互に語り手になっていくじゃない。それぞれのキャラクターによって、物語への肉付けの仕方が違っていくところが面白かった。
  1人目は社会の醜さを記事にしてきた記者。
  2人目は愛する夫を殺した女性。
  3人目は末期がんに侵された女性で、主人公の母親。
実はわたしも主人公には全然興味がいかなくて、彼の母親に惹かれて読んだの。彼女は末期がんで死んでしまうんだけれど、息子は他人の死を悼む旅の途上で行方不明。
物語は “ 主人公が母親の死を知らないまま、旅を続けている ” で終わるけど、その居心地の悪さに《やられたぁ!》っていう感じだった。読み終えて暫くは「静人(主人公)はこのあと母親の死を知ってどんな風になるのかしら」と気になってゾワゾワして暮らしたわ。ゾワゾワっていうのも変だけど、ひとつの快感だったの。
もうり それは随分楽しめたね。(笑)
オレはね、語り手が変わるっていう手法に問題を感じちゃったんだよね。登場人物が、場面ごとに交替で一人称で語るっていう手法は、うまく使わないと散漫になってしまいがちなんだ。3人の語り手は魅力的になっているよね、でも主人公は遠巻きにされたままだから、静人(主人公)に取り残された感が生じる。これだと主人公の気持ちの流れを描くにも限界があるんだよ。「“ 誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されたか ” を心に刻むことによって、人の死に優劣はない」と主人公に言わせているけど、“ 悼みの行為そのものが何から起因しているのか ” までは、流石に本人に語らせられないよな。
まるこ なるほど、わたしが主人公に興味が持てなかったのも、そこに理由があったのかしら。
悼む理由や成果みたいなことは、本人にしかわからないことだから、本を読み終わっても結局わからないままになっちゃったのね。
わたしはロードムービーとして楽しむ読み方だったから堪能できたのかも知れないわね。
【あらすし・解説】 週刊誌記者・蒔野が北海道で出会った坂築静人(さかつき・しずと)は、新聞の死亡記事を見て、亡くなった人を亡くなった場所で「悼む」ために、全国を放浪している男だった。人を信じることが出来ない蒔野は、静人の化けの皮を剥(は)ごうと、彼の身辺を調べ始める。やがて静人は、夫殺しの罪を償い出所したばかりの奈義倖世と出会い、2人は行動を共にする。その頃、静人の母・巡子は末期癌を患い、静人の妹・美汐は別れた恋人の子供を身籠っていた――。 静人を中心に、善と悪、愛と憎しみ、生と死が渦巻く人間たちのドラマが繰り広げられる。著者畢生(ひっせい)の傑作長篇。