Marco 知の鍵

メインBlogから本に関するものをピックアップ。ああビブリアみたいな場所で一日中本読んでいたい。

加賀百万石物語 著:酒井美意子

f:id:garadanikki:20190531135132j:plain酒井美意子さんの本を読み続けている。

これは1992年 ( 平成4年 ) に書かれた作品。

タイトルに秘史とあるように、前田家で語り継がれた教えや、身内しか知らないような話も書かれている。

読めば読むほど、前田家が徳川幕府に恐れられた存在であったかがわかった。

幕府に目をつけられないよう、慎重に処さなければならない百万石の大名家。

謀反を疑われないようにとか、おとりつぶしにならないようにとかを考えてふるまうことの苦労たるや、尋常なものではなかったようだ。

前田家が文化に力を注いだ理由も興味深く、加賀ブランドに対するプライドの高さや、加賀目線の内緒話も面白かった。

 

 

美意子さんの著書は、大きく二つに分かれる。

ひとつは、マナーやお洒落、しつけに関するの本。

もうひとつが前田家や華族について書かれた本である。

専ら私は後者の本を読んでいるのだが、彼女の話は貴重である。当事者だからだ。

 

時として《上から目線》で語られる部分もあるけれど、不思議と嫌な気分にならないのだ。

どこにも特定の個人を傷つけるような箇所がないからであろう。

相手を傷つけず嫌な気分にさせない、これこそマナーの先生として大切なことだから。

爽快の中に、前田家の歴史が理解できる面白い一冊だった。

ひとつご紹介を⤵ というかザックリ書き抜いたもの。

 

文化立国

前田家の文化政策は他を寄せ付けぬ秀でたものでした。

始祖・前田利家も「文化立国」を唱え、金箔、染織、和紙などの製造を藩として保護奨励しました。三代藩主-利常もまた、加賀が文化的に豊かな藩になるように、工芸品の製造を保護し、育成、保存に励んだ人でした。

加賀藩はその大きさからも徳川幕府に目をつけられていましたが、謀反など毛頭持っておりませんというアピールの為にも、戦争放棄を標榜して文化にうつつを抜かしているという態度を見せ続けていたようです。

本文には、こんな風に書かれています⤵

利常はコレクションにも力を注ぎ、和漢の古書や美術工芸品、骨董、名物裂 ( 布地 ) など、わけても平安の王朝文化の華を意識して集めて保存してきました。

これぞ江戸の田舎者 ( と加賀では言っていました ) が何にもまして欲しがっていたものです。いうまでもなく質の高さ確かさで、これに並ぶものはありません。

江戸の田舎者とは、言うじゃあないか。

なるほど、お国ではそういって徳川を馬鹿にしていたのかと笑ってしまう。

中国の古語に、「三世の長者は衣服を知り、五世の長者は飲食を知る」

という意味深長な言葉があります。

要するに、衣服や食事やもろもろの文化についてよくわかるのは一朝一夕のつけ焼き刃 はきかない。ハイレベルの生活を何代にもわたって続けた家の人間でなければ無理だ。何かの拍子に突如成り上がり、にわかに衣食足りた人間に、いったい何がわかろうぞ。笑止である・・・。

いいますなぁ (苦笑)

中国の賢者が痛烈だとしながらも、前田利常もこれに相応する者であり、中国の長者と同じように、王朝文化こそ最高と評価、敬意をもって蒐集した人物であると述べているところがいい。

 

 

この本で知ったのだが、

京都の桂離宮の整備も、利常が高額の出資をしたのだそうな。

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前田が参画したとなれば、金に糸目をつけず最高のものを、末代まで歴史に残るものをと決意したようで、当代一流の画家に襖絵を描かせたり、彫金に凝ったり、とびきりモダンな南蛮渡来のビロードを用いたり、宮家の名に恥じないものを作り上げたのも、バックには利常の働きと前田の財力があったのだと知り驚いた。

 

桂離宮の整備については、Wikipedia などを見ても、前田の間の字も出てこない。

こういう所にも加賀藩のブライトとセンスがにじみ出ているのかと愉快だった。