前回、百花文庫で島木健作の『土地』を読んで以来、気になる存在になった作家です。
北海道に生まれた彼は、34歳の時に鎌倉に移転しています。結局彼は、肺結核で42年の生涯を鎌倉の病院で閉じたそうで、お墓も鎌倉の浄智寺にあるのだそうです。
気になる人がまたしても鎌倉と関わりがある。これを『縁』と言わずになんというのでしょうか。
今回の鎌倉行きは、弘文堂で島木さんの本を探すのが目的。
由比ヶ浜 弘文堂は、老舗の古書店で、「鎌倉縁の作家本なら任せろ」といった品揃え。
もちろん島木健作だって、さりげなく何冊も置いてある。
『獄』『第一義の道』の二冊を買って帰ります。美本です!!
ヤフオクで古書を探すと、必ず出品者が「中古品ですので、神経質な方は入札をお控えください」との但し書きを出しています。
半分わかる気もするけど、半分わからない。
ドラマ『ビブリア古書堂の事件手帳』第5話でも、
アントニィ・バージェスの『時計じかけのオレンジ』の感想文をめぐって、小菅奈緒の中学生の妹 結衣が、潔癖症ゆえ人が読んだ図書館の本も友達との本の貸し借りもNGという話がネックになっていました。
そのドラマを見て、世の中にはそういう気の毒な理由で本を手に取れない人もいるんだということがわかったけれど、古書を気持が悪いかどうかというのは、実はそれ以外にもあるような気がする。かつての持ち主の念いが強い本ていうのかしら、それは本に限ったことではないけれど、古書を手にとった時に新しい読者に読まれたがっている本とそうではない本があるような気がします。
私が美本だと思うのは、シミや折れや書き込みやぶれがあるかじゃないんです。
新しい人に読まれたがっている本というのかしら、そういう本だと、最初は妙に古ぼけて見えても、何日か持ち歩いている内に清々しくて軽やかで明るい印象になっていくんです。
今回の二冊もまさにそんな感じの美本です。
パラパラとページをめくり、紙と紙の間に新鮮な風を通していく内に、本の表情が変わってくるのが今から楽しみです。
昭和12年発行の本ですから、それは、それなりに、シワシワです
でも、手に取った時の感じが、とてもいい。