Marco 知の鍵

メインBlogから本に関するものをピックアップ。ああビブリアみたいな場所で一日中本読んでいたい。

元華族たちの戦後史 1 序章 終戦前後 1

酒井美意子さん著「元華族たちの戦後史」を読んでいる。

これは冒頭の部分。

端的な文章。ハッキリしたものいいを、気持ち良く感じる。 

そのころ、私は和歌山県日高郡由良村阿戸にある海軍の特攻基地・紀伊防備隊の近くの農家の二階に住んでいた。夫は昭和18年12月に学徒出陣して京都帝大より海軍に入り、私は20年3月に結婚、夫の勤務地に来ていた。

 

昭和20年8月9日、ソ連参戦のラジオ報道に裏切りを怒るり「もう駄目だ」とのショックに打ちのめされた人が多かった。私はその日の日記に、

「本当に私たちは未来に希望を持てない時代にあるのだろうか」と書いたが、全面的に絶望したわけではなかった。

私の人生はどうなるのだ。まだ何もしないうちに、いま死ぬわけにはいかない。生きてみせる。と考えていたのである。

 

結婚だけは人並みにしたが、それは別に自慢するほどのことでもないし、私は一介の主婦だけではとうてい満足できない。

小説を書くこと、学校を経営すること、本の編集をすること、劇の演出をすることなど、本当にしたいことがたくさんあるのだった。まだ何一つやっていないではないか。

 

何故、酒井美意子さんという人に興味をいだいたのか、それがわかるような冒頭だ。

おひーさまとして生まれ、駒場の大豪邸で多くの使用人にかしづかれて育った美意子さんのパワフルさは尋常ではない。

「一介の主婦だけではとうてい満足できない」と言い切り、

「小説を書く、学校を経営する、本を編集する、劇の演出をする」などと、具体的にやりたいこと ( 仮にあとづけだったとしてもです ) しっかり持っていて、それを臆面もなく言いのける強さ。

まぎれもない姫がそこにいた。

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